哲学

「最強の大学生」の条件

1万人の大学生を見てきたけど、「最強だなー」って思う人は下4つを兼ね備えていたなあ、って思い出してるなう。

1、自分の存在意義を問う哲学ができる

2、幅広い行動と深い行動、両方できる

3、絶え間ない学習意欲と建設的な議論の作法

4、ノリと気遣いがちゃんとできる

 大事なのは、「哲学」「行動」「学習&議論」「気遣い」。コミュ力とかスキルとか専門性は、この上に乗っかってくると個人的に思っている(うーん、ちょっとあやしいかも)。

 この4つがどこに手に入るんですか?と聞かれたら、うーん、と答えるしかない。東大に行くと、3は割と身につくけど、2とか1は一部界隈でしか身につかない。4もあやしい。

 個人的な経験を申し上げれば、1は「自分の存在意義が危機に瀕したときに開く扉である」と思っていて。留学や恋愛やサークルでトラブルが起きると、その度に自分の人生を考えたりしますよね。

 でも、それだとまだ浅い。もっと徹底的に考えないと、自己の確固たる信念はでき上がってこない。過去の哲人に学び、友と議論し、己が存在を賭けて考えるレベルまで落とし込めれば、物凄く強い。何物にも揺らがない確固たる生き方ができるようになる。

 しかしながら、そこまでの深さを求めてくれるような、メンターや友人がいないと、正直、常人はここまでには達しない。そういう環境は物凄く少ないので、これを体得している人の数は少ない。

 ちなみに「哲学」、「行動」、「学習&議論」の3つは、どれかが深まると、それによって他が深まるという関係性になっている。

 2に関しては、「行動」というものが、「賞賛されたり」「実利が得られたり」する環境やコミュニティによって獲得されると僕は思っている。

 足を引っ張られたり、ディスられたり、デメリット盛りだくさんだったら、誰も行動はしたくなくなるだろう。ところが世の中そんな環境やコミュニティばかりだ。

 さらに言えば、コミュニティの「哲学」や「目的設定」が甘いと、行動の幅広さや深さに制限がかかってしまう。例えば、「寮を楽しく平和に運営する」という目的を重視する寮では、「組織内部での行動」は賞賛されるが、外部とのかかわりは「寮の規律と秩序を乱すもの」として制限されてしまう。

 万能なコミュニティや環境というものは存在しないから、自分の哲学や興味の深まり次第で、環境を変えていかないと、息苦しくなってしまう。

 3と4に関しては、もはや「文化」だ。そういう議論や学習を求めるようなコミュニティに自分がいれば、自然と自分もそうなるし、「ノリと気遣い」が重視される環境や立場にいれば、自分も自然とそうなる。

 3に関しては真に世の中に求められるものを追求するときや、複雑性の高い問題を効果的に解いたりするときや、人にわかりやすく説明して巻き込むときに用いられるので、クソ大事である。

 4に関しては組織を束ねたり、円滑に物事を進める上で大事になってくる。世の中大抵人間で回っているのだし、大きな物事を成すには一人じゃやっていけないのだから、ここも要となる。

 ただ問題なのは、大体の人は3と4の、どちらからにしか所属しないので、どちらかが欠けてしまっているパターンが多いのである。

 もったいないなあ、両方あれば、最強なのになあ、と思う次第です。

 はい、というわけで、勝手に4つ挙げてみましたが、いかがでしたでしょうか?正直、全部を身につけるのは、ハードルが高すぎるなあ、と思った方も多いかと思います。

 実際、僕が4つの経験をし終えたのは、もう大学に入ってから5年が経過したときでした。

 しかしまあ、今まで自分の人生を思い起こせば、「4つがある程度揃った瞬間に、色んな物事が恐ろしいほどに前に進みだした」という経験があったので、どうしてもこれはおすすめしたい。

 そして、僕は思ったのである。「この4つをどうにかして、まとめて色んな大学生に体感してもらう機会はつくれないだろうか」と。そういう人が増えたら、日本、最強やん、って。

 考えること1年あまり。いや、もう2年くらいになるかなあ。なんとなくの仮説ができたので、ちょっと公開して、皆さんから意見をもらいたいなあ、と。

 まず、このプログラムは78日です、と。参加大学生は選抜された13年生80人くらい。伴奏してくれるメンターの4年生~院生は、450人くらい。7日間で協力してくれる社会人は、100人以上。有名企業の大エースや、最先端をゆく起業家、アーティスト、官僚、学者などだ。

 プログラムでは、まあ、まず皆で仲良くなろう、と。自分のストーリーだったり興味だったりを沢山の人に話して、沢山の話を聞く。深い話の聞き方、話し方に関しては、慣れていない人も多いと思うので、色んなフレームワークを教えます。ここで、人を深く知ることの楽しさ、自分をストーリーとして語ることの大切さを体感してもらえたらなあと。

 次にまあ、今の世の中の色んなものの「行動」を知ろう、と。テクノロジーがどう世の中を変革するか、ソーシャルベンチャーの必要性と実例、アカデミックの本当の意義と活用と最先端事例、グローバルとローカルの関連やその具体的な動き方、金融やモノづくりの未来、アートと社会の関連、デザインとイノベーション、CSVと経営、行政の新しい役割などなど、今の世の中が掲げているトピックやトレンドを、網羅的に知ってもらう。今の自分が見ている世界がどれだけ小さいか、これから自分の歩む世界がどれだけワクワクするものかを、知ってもらう。協力してくれる社会人は、普段学生の前には姿を現さない方々ばかりだ。日本を代表する企業や組織から、最先端を歩む人が100人、参加者の前に現れてくれる。

 ここらで参加者の頭の中がパンパンになると思うのだけど、このプログラムはそこにさらに追い打ちをかける。それらの社会的現象が、アカデミックな世界とどう結びついているのか、過去の歴史とどう関連しているのか、自分で調べ、他者と「議論」をしてもらうのだ。とりあえず、このプログラム中、参加者には100冊の本を速読で読んでもらう。自分の興味のある分野が、どれほど深遠なのか、何と関連しているのか、そこから自分はどう学んでいけばよいのか、そんなことを体得してもらう。速読の仕方や、議論の作法は、もちろん教える。

 沢山の情報がインプットされたところで、自分が今後目指していくべき方向性をアウトプットしてもらう。どういう「行動」どういう「学び」を以て人生を歩んでいくのか。そもそもそれらの基盤となる自己は何者なのか、人生のどんな経験が自分のどんな価値観を形成しているのか、そういったことをめい一杯アウトプットしてもらう。瞑想、マインドフルネス、傾聴、あらゆる技術を用いる。

 恐ろしいことに、このプログラムでは、これをさらにブラッシュアップする。メンターの協力により、「本当にそうなのか」「他に無いのか」「なぜそうなるのか」「なぜ生きるのか」「本当にそれは社会にとって善なのか」「そもそも善とはなにか」などの質問がエグいほどに飛んでくる。自分という存在を限界まで見つめて、「哲学」し、「議論」を行う。自分がどのような「思い込み」に囚われているのかを、自覚することになる。そこから抜け出すにはどうしたらいいのかも考える。メンターは、気遣い、愛、知力、全人格を総動員して、参加者と向き合ってくれる。

 最後に、自分という存在、社会という存在、そういったものを全て統合したうえで、導き出された「行動」を参加者には策定してもらう。それは机上の空論でもなく、本当に自分の心から導き出された一歩だ。それは小さくても、大きくてもよい。このプログラムでは、全力を以て生み出されたその一歩に対して、際限の無い支援を行う。金銭的も、人的ネットワークも、場所も、何もかもだ。お金は、そうだ、10億円くらいあれば十分だろうか。

 ここまでやって、78日だ。たった80人に対して、この社会から物凄い量のリソースが投じられる。参加者は、全力でそれと向き合う。ただ、それだけだ。ただそれだけなのだけど、自分を変え、社会を変えるための、大きな転換点となるだろう。大学4年間での学びを、たった8日間に凝縮する。8日間が終わったときには、大学での学びが最高に楽しくなり、自分にできないことが無いことを知り、足取り軽く世界のどこへでも飛んでいけるようになり、自分が心から決めた物事には全力でコミットできるようになっている、そんな状態になればなあ、と思っています。

 さらに、このプログラムを走り切った人には、自分のアクションに対するメンタリングや資金提供、自分自身の振り返りの場が、定期的に用意されます。就活や留学に対しても効力を発揮する推薦状を発行もできるし、インターン先も、特別なものを用意する。プログラミングや英語などのスキルも手に入る。望めば、自分の返るべき場所として心の拠り所になる、ホームのような場所になります。あとは、寮とかもつくりたいっすよね。ハーバードみたいな。ここら辺の詳細はまた後程。

 このプログラム、その後のサポート、それを支える仕組みをつくることは、僕の大学生活最後の挑戦となると思います。

 そもそも、6年前、この活動を始めようと思ったきっかけは、自分のこの国の大学生に対する違和感からでした。なぜ自分のやりたいことが見つからないんだろう。なぜ行動できないんだろう。なぜ途中で折れてしまうんだろう。なぜ、深く考えられないんだろう。なぜ協力できないんだろう。なぜ人を信じられないんだろう。それができる人が増えたら、たぶんもっといい社会になるのに。そういう直観からでした。

 そして、僕は決めました。日本の大学生から、この社会を変えていくような志を持ち、それを成し遂げていくような人達が排出される仕組みをつくるまでは、大学生でいつづけよう、と。

 それからは、手探りと失敗の連続でした。「色んな友達が泊まれる家を渋谷のど真ん中に作って、毎日飲んで語ってをする。」というアホみたいなことから始めて、日本の大企業がキャリア教育をする仕組みを作る、若者の民主主義を促進するため法律を変える、学生団体を連携させて社会を大きく変える、日本のリーダーを集める、高校生からロールモデルを知る、人材企業と組んでキャリア教育をする、留学を促進する、プロジェクトをやらせる、社会起業を応援する、休学を勧める、大学院で学ぶ、奨学金をつくる、合宿をする、コミュミニティを広げる、認知行動療法を学ぶ、キャリアカウンセリングの先生になる、などなど、ここには書ききれないほど、数多のトライをしてきました。しかし、そのどれもが「失敗」しました。部分的には成功していたかもしれないけど、僕の思い描く理想には程遠いものでした。

 しかしながら、その「失敗」の数々は、「人が変わるとは」「社会が変わるとは」ということに関して、僕に実に多くの知見を提供してくれました。その学びと成功を、全部掛け合わせて僕はこの78日に全てを込めたいと思います。

 もちろん、このプログラムとアフターサポートが、継続的に運営され、全国津々浦々にまで広がる「もう一つの大学」として機能するしくみをつくるまで、僕はやり切りたいと思います。

 そんなかんじで長々と書いてしまいましたが、ご意見、ご感想お待ちしております。協力したい!って声だったり、もっとこうした方がいいとか、批判とかも、とっても楽しみにしています。自分の全力の構想をぶつけるのって、とっても怖くて勇気がいるけど、それでも色んな人からの意見を貰えば、もっともっと良くなるし、そうやって人の考えを聞きながらでも自分の信念を貫けるのが、手前味噌だけど自分のいいところだなあ、と思っているので。では、ご意見お待ちしております!コメントでも、メッセでもOKです!ではでは。

 

This article is produced by 喜多恒介(株式会社キタイエ・代表取締役)