大学進学(国内・海外)

惰性で続ける「積み重ね」は、大学生の夢を食いつぶしてしまう

 これはもう、僕からの切実なお願いなんだけど、「どうか、自分の望む方向に努力を積み重ねてほしい。間違っても、望まぬ方向への積み重ねを、惰性で続けないでほしい。」大学生活の肝は、ここにあると僕は思っている。

 例えばの話。「将来、海外で仕事をしたい」という夢を持つ、A君とB君がいたとしよう。A君は手っ取り早く身近なコンビニや飲食店やカラオケでアルバイトを見つけて、4年間続けた。語学力も無いので留学は行けなかったので、そのお金で長期休暇に海外旅行を楽しんだ。誇れるスキルもやりたいことも無いので、よくわからない中小企業に就職することになった。

 一方B君は、頑張ってアルバイトを調べた。結果、ツアーガイドの通訳の仕事を見つた。それでお金と語学スキルを同時に身につけ、留学に行くことができた。能力があったので奨学金ももらえ、海外インターンも経験できた。海外でのビジネス経験を買われ、学歴は高くないけど総合商社に内定が決まった。

 A君とB君の違いは、いったい何だろうか。それは、「積み重ねたものの違い」だ。A君は、海外で仕事をしたいという将来の夢があるにも関わらず、「コンビニと飲食店とカラオケのバイト」という経験を積み重ねてしまった。結果、彼の夢とは程遠い就職先にたどり着いてしまった。

 一方でB君は、海外で仕事をするのに必須な「語学力」というものを積み重ねた。語学力が、留学、海外インターンというチャンスを呼び寄せ、最後に総合商社というグローバルなチャンスを手に入れるに至ったのだ。

 別に、海外で活躍するための「積み重ね」は語学だけとは限らない。語学ができなくても、ダンスや音楽を極めれば海外でも活躍できるし、ビジネスを極めても海外進出ができる。でも、「手っ取り早く選んだコンビニや飲食店やカラオケのアルバイト」という「惰性の積み重ね」ではダメなのだ。

 夢が叶わなかったA君は、「積み重ねるものを間違ってしまった」のだろうか。僕は、そうではないと思っている。厳密に言えば、「正しく積み重ねるための下調べや行動をしなかった」という方が正しい。

 じゃあ、B君はどうして「アルバイトを探すための下調べや行動」ができたのだろうか。ここから先は、「絶望的な真実」なので、覚悟を持って、読んでいただきたい。

 「下調べ」や「行動」も「積み重ね」によってしか獲得できないスキルなのだ。「やりたいけどわからないことがあったときに、グーグルで検索したり、文献や周りの人に聞いてみたりして、その情報をもとに現地に足を運び、欲しいものを見つけにいく」というスキルは、一朝一夕では身につかない。小中高の環境で、学び、実践し、積み重ねるものなのだ。

 さらに言えば、「将来海外で働くためには何をしたらよいのか」という夢に対して、「とりあえずお金を貯めるためにアルバイトをしよう」としか考えられない思考様式も、残念なことに積み重ねの産物だ。視野を広げたり論理的に考えたり行動を積み重ねてきた人は、その考えがイケてないことにすぐ気が付いてしまう。

 要は、今の自分という存在は、過去の自分の積み重ねなのだ。いきなり英語ができるようにもならないし、いきなり行動的になったりすることもない。「いつかやる」「いつかできるようになる」は、そのままの生活をしていては、永遠にやってこない。

 別にインターンや留学だけが、積み重ねではない。恋愛でも、闘病でも、絵を描くことでも、自分が目指したい方向に本気で進んでいれば、なんだって積み重ねだ。

 もし、「こうなりたい」「これができるようになりたい」と思っていても動けていないのであれば、正直もう、無理矢理にでも環境を変えるしかない。しょぼいバイトをやめたり、毎日何時間も遊んで課金もしてるアプリを削除したり、つまらない国内大学を飛び出したり、自分を縛る親の元を飛び出したり。

 とにかく、「外へ、外へ」。自分の心の赴くままに、外に出ていくのだ。そこで、今とは違う何かを積み重ねるのだ。それこそが大学生活の醍醐味だと思うし、人生という名の長い旅の第一歩になるはずだ。

 

This article is produced by 喜多恒介(株式会社キタイエ・代表取締役)